キミのとなり。
隣で元気のない私に「んっ!」とまた肉まんを差し出した。


「大阪ではさー、肉まんの事豚まんって言うの、知ってた?」


「……へ?」


間の抜けた言葉に拍子抜けした。


「……聞いたことはある。」


「なんか、上品に“肉まん”って言うより、“豚まん”の方がうまそうじゃない?」


「……。」


「飾らないっていうかー、味があるっていうかぁ。」

はぁ…。


「まぁ、言うならば先輩みたいな感じ!?」



……は?


そう言って、大口開けてその“豚まん”に噛り付くとなんとも幸せそうな表情をして見せた。


私は豚まんかよ。


「まぁ、人それぞれ好みはあるやろけど……俺は断然“豚まん”派やで!」


「……。」


彼のよくわからない力説が何故か私を少し元気にさせた。


恐るべし、豚まんパワー!


「アッチ…!」


出来立ての豚まんに悪戦苦闘する桜井君。


「ふっふふっ。」


なんだかそんな彼を見ていると、ズキズキしていた心が少し丸くなった気がした。


「ほんとおいしそうに食べるよね。」


「へ?そう?」


私の異変に気付きながら、全くいつもと変わらない態度で接してくれる。


それが彼なりの優しさなんだとわかった。


「つうか、そのままじゃ風邪引くで。」


「え?」


急に立ち止まる桜井君。


「俺ん家ここやねん!」


そう言って指差す先には、3階建てのマンションがあった。


「よかったら上がっていきません?」



「えっ!いっ…いい!」



「そんな格好で歩いてたら、怪しい人やと思われるで!」


そう言われて冷静に自分の姿に目をやる。



……確かに怪しい。


「さっ入って!汚いとこやけど。」


「…えっで、でも!」


桜井君は戸惑う私の背中を押し進めた。



「さぁーどうぞどうぞ!」


「……じゃ、じゃあ。」



そう言って、遠慮がちに中へ入った。


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