キミのとなり。
「裏切られたんだ。」


「……。」


仁は何も言わない。


「同じ会社の若い子と浮気してたみたい。」


「……。」


「サイアクだよねぇ。」


その時やっと仁は話し出した。


「そんなもん最悪の内に入らん。」


「…え?」


「言ってみればあんたの気持ちの問題だろ。最悪と思えば最悪になるし……考え方次第でどうにでもなる。世の中にはもっと最悪な思いをしてる奴がわんさかいる、そんなんでいちいち落ちんな。」


「……」


「それにそんな奴だって知らずにずっとこの先も騙され続ける方が最悪だと思わねぇ?」


仁はまっすぐ前を見たままそう言った。


それはとても乱暴で冷たい言葉。


だけど私をどん底から救い上げてくれるような優しい言葉だった。


本当、不器用だよね。


思わず笑顔になっちゃうよ。


でも正直今、あんたが隣りにいてくれてよかったなってちょっと思ったよ……。


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