赤い狼と黒い兎
「そんなに怖いんだ」
『……別に違うから』
そう言って唯兎の手を払いのけた。
あながち、嘘じゃない。
確かにまたあたしのせいで大切な人が死ぬのは嫌だ。
…大切な人が大切な人に殺されるのも嫌だが。
「…まぁ、俺はそー簡単にはくたばらないからさ」
『……だから?』
「だから、俺に守られなよ」
単純というか、なんというか…。
守られなよって言いながらそんな笑顔見せられたら、何も言えないでしょ…。
『…別に守らなくていいし』
「はいはい」
『〜〜…っ』
調子狂うなぁ、ほんと。
こいつと居るとマイペースさに飲み込まれそうだ。
「てゆーかさ、馨さん」
『あ?』
「馨に無茶されちゃ困るから、俺の目の届く範囲に居てね」
にーっこりとゆるい笑みを見せられ、頬が微かに引き攣った。