赤い狼と黒い兎
舞台の幕引き
−唯兎 side−



ぎゅっと馨を抱き締めていたら、いつの間にか嗚咽は聞こえなくなっていた。



「……馨?」



目に涙を残したまま、目を閉じていた。



「おい馨…」



亜稀羅は今、必死に生きようとしてんだぞ…?

お前が死ぬなって言ったからだろ…?



「死ぬなって言ったお前が、死にそうなんて…ふざけんなよ……ッ」



俺は絶対お前を助ける

だから…絶対、生きろ…。



「おい、救急車まだか!?」

「もうすぐ来ます!」

「怪我人を出来るだけ固めろ!無理に動かすな、そっとやれ!!」

「はい!!」



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