赤い狼と黒い兎


「馨!」

『!』



振り上げられた手は誰かに捕まれ、動かなくなった。



「もう、やめろ…」

『……ゆい』



振り向けば、唯兎が顔を歪めていた。



「亜稀羅は、大丈夫だから…。な?」

『……ゆい、と…っ』



もう、唯兎に抱き付いて泣くので精一杯だった。

それからの記憶は、あたしは覚えてない。



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