赤い狼と黒い兎
「まっ、放っときゃいいだろ。1週間後には会えんだからよ、たぶん」
「最後のたぶん要らない!」
「でも断食はねぇ…。今でさえガリガリなのにあの子……」
加奈子姉さんの言う通りだ。
食欲旺盛なクセに、体は細い。
でも何故か、程よく筋肉が付いていてムダな肉がない。
…どれほど馨が羨ましいか……。
顔立ちはキレイだし、背も結構高い方だし、モデル並みの体型だし、頭もイイし、運動神経だって…。
言うことないくらい完璧なのに、あの子は昔みたいに笑わない。
笑わなく、なってしまった…。
「春架?」
「顔面険しいぞ春架」
琉樹にそう言われてハッとした。
いつの間にか思考に沈んでいたらしい。
あたしは苦笑いした。
「寝不足」
「ふぅん」
「それより、双子は?」
朝から姿が見えない深子と磨子。
ちょっと目を離すとすぐこれだ……。
「さぁ…。どっかその辺で玩具でも探してんじゃないっすかねぇ〜?」
「暇人だな、アイツらも」
「そろそろ馨サンに言って止めてもらうべきかねぇ……」
馨の存在は絶対的で、moonを抜けてもまだ下の奴等に慕われている。