水に映る月
「なんで?」
慧は、優しい笑顔で訊いた。
ちょっぴり好奇心を覗かせて‥。
あたしはベンチから立ち上がり、彼の前に立った。
「星だとイッパイあり過ぎて、ケイちゃん、見つけにくいやん。だから、月♪月なら一個しかないもん。すぐに、あたしって分かるやろ?違う?」
最後の“違う?”は、慧の口癖を真似た。
それが分かったみたい。
慧は、クスッと笑った。
繋いだ手は、まだ離れていない。
このまま、ずっと離れなければいい。
「そっか。でも、順番でゆーたらオレの方が先に死ぬやろ。ん?」
「あかんもん。あたしが先!」
「相変わらず、純ちゃんは変わってるな。」
そう言うと、慧は繋いだままの手で、あたしをそっと引き寄せた。