水に映る月
 

あたしは、慧を見つめた。

慧は、一瞬、哀しい笑みを見せ、バスルームへと歩を進めた。


「ケイちゃん!」


咄嗟に彼を呼び止めた。


それ以外に選択肢は無い。

そんな心境で‥。


「逃げよ!あたし、ケイちゃんとなら、何処までだって行く!だから、逃げよ‥。」


最後の言葉は、哀しみに込み上げて来る涙で詰まったけど‥。

あたしは彼に、そう言った。


慧は、首を横に振った。


「オレには、純ちゃんを巻き込むことは出来へん‥。」


思い詰めたような表情で答えて、彼は、あたしの傍に戻って来た。


「純ちゃんには、全部話す。そのつもりで帰って来たのにな。ごめんな‥。」


ベッドの縁に腰掛けた慧は、これまでの彼の罪を、静かに語り出した。


 
< 316 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop