私の心が死んだ時…
麻衣の口から聞こえてきた「涼」の言葉に一瞬彩は携帯を落としかけた。



あれから季節は何個か廻ったのに・・・涼の名を聞くだけで彩は涙が溢れそうになる。




クラスも違い、校舎も離れている為、会わなければ考えなくてすんだ。



麻衣や周りの友達も彩に気を使って涼の名をださなかった。




その優しさは彩を慰め、少しだけ心が痛んだ。



彩の周りから涼と言う名が不自然なくらい綺麗に消え、彩はやっと普通を取り戻した・・・はずだった。



それなのに・・・・涼の名だけで彩はあの頃に戻ってしまう。



「涼君・・・・」



彩は久しぶりに涼の名を呼んだ。



「彩・・・・今まで何も言わなかった。それが・・・・」



言わなくても分かる。彩の為だと思ったからだ。



「だけどね・・・・このままじゃ駄目だよ。涼の事を忘れる為に他の人を使うのはよくない」




麻衣がそこで少しだけ言葉を切った。言おうか迷った・・・・でも言うと決めていたのだ。





「他の人といても、きっと涼の事を忘れられないよ」
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