ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~
「ねえ。フジオミ。あたし、ずっと考えていたのよ」
穏やかな風に吹かれて、フジオミは己れの思索に耽っていたが、マナの声に呼び戻される。
「マナ――?」
ドームから離れ、3日経った。
この廃墟群にも慣れ、ようやくフジオミはこの強い色彩に違和感だけではないおぼろげな美しさを感じるようになってきていた。
振り返ると、自分よりも立派にこの世界に順応している少女は、常にない真剣な目をしていた。
「もしあたしとあなたの子供が産まれても、結局人類は滅びるんじゃないのかしら」
フジオミが息をのむ。
「ねえ。そうでしょう、フジオミ?」
「マナ、言うな。それは考えてはいけないことだ」
「でも、考えずにはいられないわ。子供を産めるのは、もうあたししかいないわ。あたしとあなたの子供は、伴侶を迎えることもできずに、独りで老いていくのよ。それでも、必要なことなのかしら。博士は、一体どう考えているのかしら」
マナは知らなかった。
フジオミとの子供が生まれた後、シイナが人工受精によって新たな生命をマナに産ませようとしていることまでは。
凍結保存された卵子と精子による人工受精卵をマナの体内で育てれば、マナとフジオミ以外の血を受け継いだ子供も作れるのだ。
だが、フジオミは、そこまでマナに話す気にはなれなかった。
それは、あまりにも作為めいた苦々しい現実だった。
「――シイナは最期まで続いてほしいんだ。できうるところまで、我々人間の血が生き続けることを望んでいる」
「あなたも? ねえ、あなたもそれを望んでいるの、フジオミ?」
「ああ。そうだ」
「それを疑問に思ったことはないの?」
一瞬だけ、フジオミは呼吸を止めた。
だが、無表情なその顔から、動揺が読み取られることはなかった。