ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~

 ユウは食器を洗いながら、マナはお昼のお弁当にするおにぎりを握りながら、これから登る、廃墟の東にある森の話をしていた。
「ねえ、ユウ。動物は、いるの?」
「ああ。うまくすれば、近くで見れるかもしれないな。見たい?」
「ええ。あ、ユウ、お塩とってちょうだい」
「ん」
「卵は茹でたのを持っていきましょう。それと、飲み物も。お茶がいい?」
「熱いのがいいな」
「ええ。これが終わってからね」
 手際よく握ったおにぎりを包むと、マナは手を洗い、お茶の支度に取りかかる。
「お湯は沸騰してからよね。でも、入れるのは少し温度を下げてから」
「ああ」
 やかんを火にかけるマナを見ながら、ユウが微笑う。
「マナ、料理も、お茶を入れるのも、俺よりずっと上手くなった」
「ほんと!?」
 嬉しそうにマナが笑う。
 自分の料理や手際を誉めてもらうのはとても気分がよかった。
 マナはのみこみがはやく、器用だったので、コツをつかめば、ユウに教えられたことも二、三度で、すぐにできるようになってきていた。
 今までマナが学んできたのはディスクによる知識ばかりだったから、何かを作ったり、身体を動かして体験することはほとんどなかったのだ。
 ドームでも、もちろんすることはたくさんあった。
 ディスクによる学習、健康を維持するためのジムでのトレーニング、そして、たくさんの検査。それがマナの義務だった。
 空いた時間は読書や娯楽ディスクを観るなどはできたが、それもシイナによって厳選されたものを与えられるだけ。
 だから、時間というものは、マナに関係なく、ただ緩慢に流れ去っていくだけのものでしかなかった。
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