ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~

 膨れた顔をしながら、それでもマナは頷いた。こういうとき、シイナは決して譲らない。そして、約束を破ることも決してないのだ。
 廊下を駆けて曲がり角まで来たとき、マナはそっと立ち止まり、振り返った。
「――」
 シイナとフジオミは何か話をしているようだった。
 マナには気づいていない。
 もう一度、マナはじっとフジオミを見つめた。
「彼が、あたしの〈伴侶〉になる人なのね」
 ほうっ、と、息をついてマナは笑った。
「すごく素敵。優しそうだし。よかった」
 話には聞いていたのだ。
〈夫〉となるフジオミのことは。
 だが、マナはそれまで一度もフジオミに会ったことはなかった。否、シイナ以外の人間と、彼女は接触したことはこれまでになかった。
 シイナ以外ここにいるのは、みんなドームを維持するためにオリジナルである人間から複製された、クローン体ばかりなのだ。
 初めて見る、自分と同じ立場の異性であるフジオミに、マナの興味は尽きない。
 じっとシイナとフジオミを見ているマナに、しかし、彼らのほうが気づいた。
 マナは驚いたように振り返ったシイナに手を振ると、予定された今日の〈学習〉を終えるために学習室へと向かった。


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