ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~
「――あたし、ユウのこと好きよ。おじいちゃんもよ」
後ろめたい気持ちを隠せないまま、マナは言葉を繋ぐ。
「でもね、あたしはフジオミの子を産まなきゃいけないのよ。だから、ずっとここにはいられない、と、思う…」
「それがおまえさんの意志なのかい、マナ?」
「え?」
顔を上げて老人を見つめるマナの瞳は、戸惑いの色を露にしていた。
「おまえさんは、他の誰に言われたのでもなく、自分の意志で、そのフジオミとかいう人の子供を産みたいのかい?」
真っすぐに見据える瞳に、ごまかしはきかない。
「――わからない。そんなの、考えたこともないわ。だって、そういわれて育ってきたんだもの。それが当たり前だって、思ってたんだもの。それじゃ、いけないの?」
「では、考えなさい。幸いここには考える時間だけはある。
マナ、自分がどうしたいか考えるんだよ。
他の誰に強要されることなく、自分の心で、見極めなさい」
老人の言葉は、それまでマナの考えもしなかったことを彼女自身に選択させようとしていた。
義務として、使命としてではなく、自分の意思で考える。
それは、マナにとってはとても難しいことだった。
少しずつ新しい世界――別の視点からの見識――を理解しているとはいえ、マナはいまだ十四歳の子供に過ぎなかった。
(ここにいなさいって、言ってくれればいいのに)
ドームにいたときは、全てシイナがマナのすべきことを教えてくれていた。
マナはただ、彼女の言うとおりにすればよかった。
疑問さえ、抱いたことはなかった。
それが正しいのだと、ずっと思っていたからだ。
「おじいちゃん、あたし、間違ってたの?」
不安げに、マナは老人を仰いだ。
皺だらけの乾いた手がマナの瑞々しい若い手を取る。
「こんな世界だ。間違っていることが、悪いことだとは言えんよ。
我々人間は、確かに選択を誤った。だが、今更それを否定できはしない。そのまま進むしかない。
だからこそ、決断は自身でするのだ。自分が決断したことなら、その後悔ですら自分だけのものだ。
誰かの所為にして生きても、それは本当に自分の生を生きたとは言えんのだよ」