ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~

「――」
 長い廊下を足早に歩きながら、シイナは堪えきれない怒りを感じていた。
 くだらない不毛な会話を続けたことを後悔していた。

 もはや話し合う価値さえないのに。

 シイナはカタオカを尊敬していた。
 カタオカは、フジオミにもシイナにも分け隔てなく接してくれた。シイナには、生殖能力がなかったにもかかわらずだ。
 だが、それは愛情からではない。
 ただ単に、どうでもよかったのだ、彼にとっては。
 だからこそ、あんな決定ができたのだ。

フジオミの発言を尊重しよう。シイナ、君は君の義務を果たしたまえ。

 その時、シイナは自分を支えていた世界が壊れたのを知った。
 愛されていると信じていた。
 例え自分に、生殖能力がなくても。
 だが、残ったのは屈辱と、嫌悪と、怒りと、絶望だけだ。

シイナ。私の決定は君をそんなに傷つけたのか。

 あの日を境にすっかり変わってしまったシイナに、カタオカは苦しそうに尋ねた。
 まるで、後悔でもするように。
 だが、もはやシイナには彼の贖罪など、どうでもよいことだった。

 壊れたものは戻らない。
 優しい過去へは戻れない。

 許してくれと言いたげなカタオカに冷たい一瞥をくれて、あの時シイナは彼に背を向けた。
 もはや彼に対しては、軽蔑しか持てなかったのだ。
 それなのに、フジオミのために自分を犠牲にしておいて、なぜそんなことが言えるのだ。

 組み敷かれて恐怖に泣き叫んだあの時間を、踏み躙られズタズタにされた誇りを、自分は一生忘れないだろう。

 忌まわしい過去が甦ってくる。
 同時に、嫌悪が身を貫く。
 嘔吐感に襲われ、シイナはきつく瞳を閉じた。
 震える身体を必死に押さえつける。
 あの過ぎてしまった時間を思い出す時、いつも身体が拒絶反応を起こす。
 それ以外は、フジオミに抱かれているときでさえ、こんなことは起こらないのに。
「――」
 震えが徐々に収まるのを感じながら、シイナは改めて、今回の事件の元凶となったユウに対して、新たな怒りを感じた。
 あの時、きちんと殺してさえいれば、計画は順調だったのだ。
 自分の失態だ――シイナはきつく拳を握った。

「何としても、マナは取り戻す。今度こそ殺してやるわ。死ぬまで、何度でも」





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