ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~
地下室を出てから真っ直ぐ自室へ戻ったユウだが、気分が晴れずに外へと向かおうと部屋を出、階段を降りた。
「ユウ?」
階段の踊り場で呼び止められ、苦い思いで顔を上げる。
だが、今は誰とも話をしたくなかった。口を開けば、自分はまたマナにあたりちらすだろう。
ユウは黙って階段を下りて外へと向かった。
追いかけてくる足音が響く。
「ユウ、待って。あなたに話があるのよ」
マナの声に、ユウは振り返った。
彼女は真っすぐにユウを見つめていた。
彼が戸惑いを覚えるほど一途に。
マナは階段を駆け下り、ユウの前に立った。
「ごめんなさい、ユウ。あなたのこと、疑ったりして。とても反省してるわ。
でも、あたしは博士が好きなの。ユウを好きなのと同じくらい、博士もフジオミもおじいちゃんも好きなの。ユウは博士を好きなあたしを、許してはくれない? やっぱり、一緒にいるの、いやかしら」
遮られるのを恐れるように、マナは一息に喋った。
「――」
ユウは遠い瞳で、マナを見ていた。
そのままマナを通り抜け、自分を動かすものに想いを馳せる。その感情がどういうものかは、自分からはあまりにも遠すぎて、理解することはできなかったけれど。
マナの意志は、もう揺らがない。
彼女は自分で考え、そして選んだのだ。
「シイナは、あんたに優しかった?」
穏やかなユウの問いに、マナはしっかりと頷いた。
「とても優しかったわ」
マナの気持ちは、マナだけのものだ。
自分の憎しみが、自分だけのものであるように。
ユウは、それを理解した。そして、受け入れた。
「それなら、いい。あんたはあんたが信じたいものを信じればいい。誰も、人の心に強制はできない。俺が憎む分、あんたは愛せばいい。俺が許さなくても、あんたが許せばきっとシイナは幸せになる」
不思議と、心は穏やかだった。
マナの瞳は、いつも迷わずに自分を見据える。
マナは、今ここにいる自分を、確かに見てくれる。
「マナ、あんたは強い女だ」
「強い? あたしが?」
「ああ。とても、強い」
自分よりもずっと。
自分は一体、誰を見ているのだろう。
「俺はずっと、あんたに会いたかった。あんたが俺を知るずっと前から、俺はいつか、あんたに聞きたいと思っていたことがあったんだ」
「それは何?」
「もういいんだ。もう、どうでもいいことだから」
目の前のこの少女が愛しかった。
だがそれは、決して許されないものであることも知っていた。
「それでも、俺は、ずっとあんたに会いたかったんだ――」