桐谷くんの心をハイジャックしてきます。
その隆臣と連れだって向かう場所。
「今日もあそこ?」
『うん』
正門から見て、一番奥の校舎。
そこの東側の階段を一番上まで上ると、ガラスに赤いペンキで大きく×が書かれたドア。
そこを何の躊躇いもなく開け、「おはよ」と隆臣に言ったように声を投げかける。
『おそよー』
『んー』
それに答えた声は二つ。
どちらも聞き慣れた声で、
「美亜、矢野くん」
揃ってフェンスに背を預ける男女に声を掛けた。
黒にピンクメッシュの入った髪の長い女の子――美亜は、ひらひらと手を振る。
『上』
あたしのオレンジブラウンの髪に付いた寝癖を撫でつけた、トップがグレイで中が黒髪――矢野くんは、貯水タンクがあるそこを指さした。
あたしはそれを追うように視線を上に向けて、
「律希ー」
そこにいるであろうアイツを呼ぶ。
『あ?』
「お弁当」
梯子のある場所から顔を覗かせ、
『持って来いよ』
くいっと、顎で自分のいる場所に来るようにあたしに指示する。
それに素直に従ってしまうあたしは、相当コイツに弱い。
『相変わらずのラブラブで』
美亜はケラケラと笑いながら、あたしを茶化す。