桐谷くんの心をハイジャックしてきます。
それにべー、と舌を見せ、
「美亜と矢野くんには負けますけどね!!」
『あはっ』
照れたように笑う美亜。
それを見る矢野くんの頬は、ほんのりと赤く染まっていた。
『奈月ー』
「今行く!」
『ほらほら。彼氏くんがお呼びだよ』
そう言う美亜をもう一度見やると、ニヤリと笑われてしまった。
もう何も言うまい、と。
あたしは少し錆びた梯子に足を掛けた。
「律希」
『腹減った』
目に飛び込むような鮮やかな赤いアシメ――あたしの彼氏である律希は、チラリと片目を瞑ったままあたしに視線をくれる。
隆臣も矢野くんもカッコいいと評判だけど、それを上回る人気なのがコイツ。
悔しいくらいに綺麗に整った顔。
キメの細かい肌に、どんな人だろうと射抜く鋭い目、スッと通った鼻、赤みの薄い唇。
『奈月?』
「うん?」
『またボーっとしてんぞ』
「嘘!?見なかったって事で。はい、お弁当」
『さんきゅ』
あたしが差し出した青のお弁当を寝転がったまま受け取ると、ひょいと起き上がって、そこに胡座を掻いて座る。
ポンポン、と。
律希が自分の横を叩いて、あたしはその場所に座る。