桐谷くんの心をハイジャックしてきます。
矢野くんといちゃこらする美亜を強制連行する。
暫く顔の火照りが治まらなかったのも、授業に集中できなかったのも。
言うまでもないだろう。
――"桐谷くんはお弁当をご所望?"
『奈月ちゃん、可愛かったね』
ゴロンと、屋上のコンクリートに寝転がる赤いアイツに目を向けて、
『お弁当美味しかった?』
『……ハンバーグ焦げてた』
『あらま』
『……美味かったけどな』
いつもは無表情で、その綺麗すぎる顔に、鋭すぎる目に。
恐怖を抱かせてしまうのに、今俺の目の前にいるコイツは、だらしなく頬を緩ませていた。
『ふふん』
『隆、キモい』
奈月ちゃんを前にしてデレデレなお前ほどじゃないよ、て今は言わないでおこうと思う。
結局、奈月ちゃんが作ったお弁当なら、コイツはどんなに不味いものも美味しいと言うんだろう。

