桐谷くんの心をハイジャックしてきます。


『……そりゃ、自分の女には欲情するっつーの』


――"自分の女"

その言葉に真っ赤になったのは、言うまでもないと思う。

それを見て満足そうに笑うと、その1センチの距離を焦らすように、ゆっくりと詰めてくる。


『律ー。行く…ぞ、……ってあら?』


律希の顔がいよいよ迫ったそのとき。

タイミング悪く掛けられた、隆臣の声に、2人の動きがピタリと止まる。


『あ、ごめーん!』


悪びれた様子は微塵もない隆臣は、てへっと舌を出す。


『……チッ』

『え、何、俺今舌打ちされた…?律くんご機嫌斜め?』


盛大に舌打ちをして、律希は体を起こす。

隆臣なんか全くの無視で、あたしを起きあがらせる。


『え、ねぇねぇ。俺の事ムシな感じ?』

「あ、たし…行くね!」


恥ずかしさに耐えきれる筈もないあたしは、急いで立ち上がった。


『――奈月』


グンッと右腕を引かれて振り返れば、


『忘れもん』


チュッとリップ音をさせて、軽く触れ合った唇。

離れたそこに手を当たれば、悪戯に成功した子供のように笑った男は、扇情的に唇を舐めて魅せた。

それに顔を赤くさせて、


「美亜、行こ!」

『え、ちょ…!!』


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