久遠の花〜 the story of blood~

「しばらくはどちらも様子見だな」


 そう告げると、ディオスは部屋を後にする。何処に向かうのかと思えば、どんどん階段を下って行く。


 ――そして、とある部屋の前で足を止めた。

 扉は頑丈に施錠され、技術的にも魔術的にも、厳重に塞がれていた。


「――――」


 手をかざしながら呟くと、扉はひとりでに開いた。

 中は真っ暗で、灯りも無い。その中をゆっくり入っていくと――また、扉が現れた。そこにも厳重に封がされており、先程の扉を開けるよりも、時間を要した。





「――喜べ。奴はまだ、自我があるぞ」





 部屋に入るなり、ディオスはそう告げた。怪しい笑みと共に語られたそれに、中にいた人物は横たわった体を無理やり起こし、ディオスを凝視する。


「嘘ではないぞ。今話をしてきたところだ。――微かに、気配を感じるだろう?」


 服の袖を、近くへと持って行く。するとその者は、明らかに覚えのある気配に驚きの表情を見せた。


「懐かしいだろう? だが、まだ会うことは出来ぬがな」

「っ、……余計な、手出しは」


 前のめりになりながらもなんとか体を支え、声を振り絞る。

 その様子にディオスは、口元を怪しく緩めた。


「ああ、しないとも。それが我とお前の契約――それぐらいのことを守らぬほど、小さな者ではない」

「…………」


 それとは対照的に、話しかけられた者は、悔しそうに唇を噛みしめていた。
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