久遠の花〜 the story of blood~

「そして、お前も殺しはしない。――お前は、“大事な女”だからな」


 女性の髪に触れながら、ディオスは言う。

 だが女性はその手を振り払い、


「大事なのは私じゃない! 私の力だろう!?」


 悲痛とも言える叫びを上げた。


「ああ、我はな」


 悪びれることなく、ディオスは肯定の言葉を口にする。


「だが、お前が求める者は――どうだろうな?」


 意味深な言葉を残し、男性は部屋を後にした。





「必ず――この手で」





 強い決意を表す言葉。

 両手を強く握りしめながら、女性は、小さな月明かりが入る小窓を見つめた。





「さて――これで、準備は整ったな」





 屋敷を出たディオスは、一人、月を眺めながら呟く。


「ふふっ、まだ抗うか。だが、それもまた心地いい。その抵抗も、我にはいい暇つぶしだ。精々楽しませてくれよ。――レフィナド」


 己の胸に手を当て、ほくそ笑むディオス。

 投げた賽が思うように転がり、今までで一番、心が躍っていた。
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