久遠の花〜 the story of blood~





 ――――それなのに。





 声が木霊することも、音になることもなかった。

 何度目かの叫び。未だ響くことがない声の代わりに、徐々に闇が薄れ始めていく。そこで目にしたのは――。





『――――愚か、だな』





 短剣を心臓に刺そうとする男性と、片手を犠牲にしてそれを制する、女性の姿だった。


 ―――――――――…
 ――――――…
 ―――…


 朝の目覚めは、なんとも複雑な気分から始まった。

 夢の内容はあまり覚えてないけど、血の臭いや焦げたような臭いなんかが、まだ鼻に残っている気がする。





「――美咲~。そろそろ大丈夫かぁ?」





 下から、おじいちゃんが呼ぶ声がする。

 時計を見れば、もう出かける時間になっていた。


「も、もうちょっと!」


 急いで着替え準備をしていると、ゆっくりでいいんじゃよと、おじいちゃんは言ってくれたものの、そういうわけにはいかない。

 今日は、おじいちゃんと墓参りに出かけることになっている。だから昨日は早く寝たっていうのに、起きたのはまさかのお昼。何度か起こしてくれたみたいだけど、私はまったく起きなかったらしい。

 手早く準備を済ませると、まずはバス停へ向かう。そこから更に十五分ほど歩けば、お墓のあるお寺に到着する。





「――さすがに疲れたのう」






 着くなり、おじいちゃんはちょっと休憩してから行くと言い、境内にある椅子に腰かけた。先に行っててくれと言われ、私はバケツに水をくむと、お墓のある場所へ向かった。

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