久遠の花〜 the story of blood~


「このまま帰るのも勿体ないし――どうしよっか?」


 ん? と、私の様子を見ながら、悪戯っぽい笑みが近付いてくる。


「…………」

「みさ~きちゃん。どうしたいのかなぁ~――?」


 楽しそうに手を握っていた雅さんの表情が変わる。その視線の先は、私の右手に注がれていた。


「これ……どうしたの?」


 言われて、私も右手を見る。すると、そこには夢の女性から貰ったブレスレットがはめられていた。

 あれは、本当に本物――?

 これを見てしまえば、あのことがただの夢じゃないと信じないわけにはいかない。





「――夢で、貰ったんです」





 ゆっくり口にすると、雅さんは真剣な眼差しを向ける。


「現実で貰った、ってわけじゃないんだね?」

「はい。信じられない話なんですけど……。夢で会った女の人に、貰ったんです」


 一瞬、雅さんの眉がぴくりと動く。


「その人……他に、なにか言ってた?」


 声のトーンが、低くなる。いつもと違うと思ったものの、今はそのことを気に留めず、私は質問に答えた。


「今見ているこれは、現実だって。それと――『エルに見せて』って、言われました」

「――――余計な、こと」


 俯く雅さん。どうしたのかと思っていれば、





「――――オレ、帰るよ」





 急に立ち上がり、雅さんは振り返ることなく、素早く窓から出て行った。

 どうしたんだろう――?

 なにかまずいことでも言ったのかと思いながら、私はしばらく、開け放たれた窓を見つめていた。
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