久遠の花〜 the story of blood~
「――まだ、具合はよくないようですね」
心配そうな表情をした桐谷先生が、顔をのぞかせた。
「ここが何処だか、分りますか?」
どこって……私の部屋じゃ、ないの?
首を傾げれば、やはりですかと、先生は呟く。
「実は今朝、おじいさんから連絡を頂きまして。どんなに呼びかけても起きないとのことでしたので、病院に来てもらいました」
周りを確認すれば、ベッド周りには白のカーテン。よく見れば天井も部屋の物とは違い、今更ながら、病院だというこを理解した。
「やっぱり……どこか、悪いんですか?」
「いえ。ただ、貴方の中の力が、溢れ出そうになっているようですね」
そう言えば、雅さんもそんなこと言ってったっけ。一時的に乱れてる、みたいなこと。
「それと、気になっていたのですが――これは、何処で手に入れたのですか?」
私の右手にはめられたブレスレットに触れ、先生は問う。
「夢で。――女の人から、貰いました」
「夢、ですか? 詳しく、話してもらえませんか?」
言われて、私は夢の話をした。すると先生は、みるみるうちに表情を曇らせていった。
「確かに、それは現実に起きた出来事です。――なるほど、貴方にはそのような力もあるのですね。でもきっかけが……いや。石碑でのあれが刺激に。それとも彼らとの接触が――」
納得したのか、先生は頷く。その後は一人で、なにやらぶつぶつと言っている。
「そろそろ、止める時期なのかもしれませんね」
「止めるって、なにをですか?」
「薬ですよ」
薬、って――。
なにを、言ってるの?
言われた言葉が理解できなくて、すぐに反応を示すことができなかった。そんな私を気遣ってか、先生は薬を止める理由を話していく。