久遠の花〜 the story of blood~


 レイナが……現れる? そんなこと。

 どういうことだ、と桐谷は困惑した。


「これは、私たちに伝えられた予知なんです。王華の長は、いずれ箱を手に入れ、レイナ様を蘇らせます」

「!? そのような、こと……一体、どうやって」

「赤の命華の血と、レイナ様の子の血があればいいんです。幸か不幸か、レイナ様の子は赤の命華として生まれ、尚且つ女。蘇らせる以外でも、あちらにとっては好ましい存在になっていますね」

「しかし、箱に触れられるのは、華鬼の長だけではないのですか? 封じたのは、彼女なわけですから」

「――――だからこそ、ノヴァがいるんです」


 悔しそうに。けれども愛おしそうに。エメは、どこか遠くを見ていた。


「ノヴァは、華鬼の長と、王華の長の子どもなんです。だからあの子なら、箱に触れることが出来る。とは言っても、無傷で済むことは無いでしょうがね。――さてと」


 そろそろ行きます、と言い外へ出ようとするエメ。それを、桐谷は腕を掴み止めた。


「そのままでは危険です。今、薬を持って来ますから」

「私には不要ですよ。まだ、落ちるには時間がありますし。――それに、あちらにいる者たちをまとめるには、このままの方が都合がいいですよ」

「そうだとしても、万が一、理性が戻らないとも限りません。影ならまだどうにか出来るかもしれませんが……やはり念の為、薬を飲んで下さい!」


 何度も勧められ、エメはようやく、桐谷の言葉に頷いた。


「本当、ヒカルさんは優し過ぎます。私は本来、生きてるはずの無い者なのに」

「それは、貴方が自ら望んだことではありません。貴方だってまだ、生き続ける可能性があるのですよ」

「……だと嬉しいですけどね。精々、足掻いてみます」


 そう言い、エメは外へ出た。姿が見えなくなるまで、桐谷はじっと、外を眺めていた。
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