久遠の花〜 the story of blood~
「湖からは帰れない。だから別な道をとこちらに来たが――」
目の前に広がるのは、焼けた家々。記憶にあるのとは違うその場所に、蓮華は眉をひそめた。
「封がしてあるはずだが……。いつ破れた」
桐谷に説明を求めるも、詳しいことはわからないと告げられる。
「日向さんを連れて来るまでの数百年、この世界に近付いてはいませんので。――貴方たちなら、何かご存知なのでは?」
聞けば、知らないと雅は即答。だが、叶夜は心当たりがあるのか、浮かない表情をしていた。
「…………」
「キョーヤ、貴方は?」
「……知ってる。
破ったのは――多分、オレだと思う」
「お前、確信が無いのか?」
「記憶があやふやなんです。でも――この場所は覚えてる」
「では、この有様もお前が?」
頷く叶夜を見るなり、蓮華は重いため息をついた。
「ならば、ここにあるはずの道も危ういか。――リヒト、道を作るぞ」
「構いませんが、貴方の負担が……」
「気にするな。早く戻る方が先決だからな。場所は、こちらで指定する」
話を進める二人に、叶夜は待ったをかける。このまま美咲を置いて逃げることは出来ないと、ディオスの元に戻ろうと説得する。
「――――それは出来ない」
意を唱えたのは、美咲のそばにいた青年。
怪訝そうな表情の叶夜に、青年は続ける。