久遠の花〜 the story of blood~
「今は引くのが先決。我々が生きて逃げおおせなければ、主の行動が無意味になる。どうしても行くというのであれば――」
青年の瞳が、左右変化していく。青と緑。輝きを増した瞳で、叶夜を見る。
「力づくで、貴方を連れ帰ります」
明らかな敵意。
身構える二人に、蓮華は間に入った。
「ここで争うな。余計な者に気付かれるだろうが。――お前の考えもわかるが、今はこの者の言うとおり、引くのが先決だ。傷付いた体で何が出来る。それに、この場にいる誰一人として、あいつに敵いはしない」
「っ、だからと言って……」
「安心しろ。あいつは美咲を殺さない」
「でも、傷付けないという保障は」
「それもしない。目的の為には、無傷で生きていなければ意味が無いからな。――始める」
続きは後からだと話を切り、蓮華と桐谷は、作業に取り掛かった。
静かに、呼吸を整える。
冷たい空気が漂い、はく息が白くなるほど。
蓮華は右手に力を集中させ、二メートルほどの氷柱を目の前に作り出す。姿が映るほど表面が滑らかになると、桐谷がそれに触れ、言葉を唱え始めた。