久遠の花〜 the story of blood~
「私は昔、ある方に仕えていた。その方は、現世で日向美咲と呼ばれる方。
私が主と接触するのは、主が生を終結させる時。他の誰にも邪魔されることなく、主の望みを遂行する為、私は仕えている。あの場でも、主はそれを行おうとした。だというのに……」
ぎっ、と鋭い視線を叶夜に向ける。
「貴方が邪魔をしたせいで、主は捕らわれてしまった。貴方が出て来なければ、主は望み通りの死を迎えられたというのに」
「――望み通りの、死? お前、本気で言ってるのか?」
「主の望みを遂行する。それがどんな願いだろうと、私に拒否する術は無い」
「大事じゃないのか? 自分が使えるほどの相手に、そんなことを本気で望むのか!?」
胸倉を掴み、青年を睨む。
しかし青年は、冷めた様子で叶夜を見ていた。
「――貴方には、わかりませんよ」
その瞳は、まるで心を見透かすようだった。
「主が何を思い、どうして死を選ぶかなど――貴方には、わかるはずない」
「っ!――――?」
「話し合うことが先決だと、言っておるだろう」
上げようとした叶夜の手は、蓮華によって制された。
「冷静になれなければ、助けに行くことは出来ぬぞ」
「…………」
渋々ながら、青年を掴んでいた手を放す。
頭を冷やす為か、叶夜はみなから距離をとった。
「――では、続けるとしよう。お前は、この世で生まれ変わるたび、主である美咲の前に現れるということか?」
「えぇ。しかし、いつもは私を呼ぶ力などない。そもそも、過去の記憶を所持するなど――今回の主には、不可解なことが多過ぎる」
「――不可解じゃないよ」
今まで沈黙を貫いていた雅が、そんなことを口にした。
「美咲ちゃんは、伝承にある命華の子どもだし、赤の命華。力なんて、あって当然だよ」
淡々と語る雅に、蓮華は興味ある視線を向ける。