久遠の花〜 the story of blood~
「この体が、力に耐えられないだけだ」
「では、私の力も使えば」
「やめておけ。もう他のことに使う余力など無いだろう?
オレのことは気にするな。またしばらく、眠るだけなのだから。――早く契約者に知らせろ」
すると、執事は神経を集中し始めた。徐々に、体に文字が浮かび上がっていく。青白い光が身を包むと、美咲の片手を取り、その手を自分の胸に触れさせた。
「? あなた――れっ」
「考えるな」
不要な記憶だと、言葉を遮る。
視線を絡ませ、ただ真っすぐ、まるで焼きつけるように、執事は美咲を見つめ続けた。
「――後のことは、うまくやります」
「あぁ。自分の願いも、うまくやれ」
その言葉を最後に、執事の体は、静かに消えていった。
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誰かが――叫んでる。
その声は、同じ言葉を連呼しているようだ。
一体、なにをしているのか。
ここに在るのは――『 』。
この場所には、なにも存在しない。
個や体。物体と言われるものが存在しない、空白で『 』のみが在る場所だというのに。
誰かまだ――叫んでる。
けれど、それももうすぐ聞こえなくなる。
こうして思考を巡らせることも、そろそろ鈍くなってきた。
声の主は、いつまで――…。
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