久遠の花〜 the story of blood~


「この体が、力に耐えられないだけだ」

「では、私の力も使えば」

「やめておけ。もう他のことに使う余力など無いだろう?
 オレのことは気にするな。またしばらく、眠るだけなのだから。――早く契約者に知らせろ」


 すると、執事は神経を集中し始めた。徐々に、体に文字が浮かび上がっていく。青白い光が身を包むと、美咲の片手を取り、その手を自分の胸に触れさせた。


「? あなた――れっ」

「考えるな」


 不要な記憶だと、言葉を遮る。

 視線を絡ませ、ただ真っすぐ、まるで焼きつけるように、執事は美咲を見つめ続けた。


「――後のことは、うまくやります」

「あぁ。自分の願いも、うまくやれ」


 その言葉を最後に、執事の体は、静かに消えていった。


 ◇◆◇◆◇


 ――――――――…
 ―――――…
 ―――…





 誰かが――叫んでる。





 その声は、同じ言葉を連呼しているようだ。

 一体、なにをしているのか。





 ここに在るのは――『 』。





 この場所には、なにも存在しない。

 個や体。物体と言われるものが存在しない、空白で『 』のみが在る場所だというのに。





 誰かまだ――叫んでる。





 けれど、それももうすぐ聞こえなくなる。

 こうして思考を巡らせることも、そろそろ鈍くなってきた。






 声の主は、いつまで――…。





 ――――――――――…
 ――――――…
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