久遠の花〜 the story of blood~


「あぁ、大丈夫だ。それに、私が産んだこともあってか、術の耐性がある。
 ――信じろ。必ず、お前も子供も助ける」


 しっかりと、シエロの手を握りしめ誓う蓮華。それにシエロは、そんなのじゃダメよ、と付け足す。


「レンだって……本当は、助けたいんでしょ? 自分の望みも、ちゃんと叶えてくれなきゃ」

「――――くだらない」


 それは、とうの昔についえた思い。

 自分が初めて、感情というものをむき出しにしたそれは、今はもう、届かないことだと知っているのに。







「私はもう――望まぬ」







 立ち上がると、蓮華は何も言わぬまま、部屋を後にした。


「違うのに……。でも、約束だから」


 ごめんね、と呟きながら、シエロはゆっくり、眠りへ身を任せていった。


 ◇◆◇◆◇


 介抱してくれた女性、エメという人から、色々と話を聞いた。今置かれている現状と、周りの現状。

 そして、【これ】の性格と人間関係を聞いた。

 今いるこの場所は、彼女の家の一室らしい。


「とにかく、自分のことを物みたいに言うのはやめましょ?」

「モノみたいというか――」


 実際、この表現がしっくりくるのだけど。
< 311 / 526 >

この作品をシェア

pagetop