久遠の花〜 the story of blood~


 *****


 蓮華の言葉により、その場は一時騒然となった。

 彼女の言葉が本当なら、急ぎ美咲を助けなければ、存在を消されてしまうということになる。


「みな落ち着け。――お前たちが騒ぐから、シエロが来てしまったではないか」


 部屋の入り口では、戸を少し開け、座りこんでいる女がいた。

 しかしその女は、先程見た姿とは違い、髪が赤色をしていた。


「少しは抜けたようだな」

「――うん。ちょっとは」


 苦笑いを浮かべるシエロ。まだ調子は戻っていないらしく、立つことは難しいようだ。


「ほら、部屋に戻るぞ。男どもは、またしばらく待っていてくれ」


 体を支えながら、蓮華はシエロを部屋に連れて行った。


 *****


「全く無理をしおって。目覚めたばかりで動くな」

「もう、心配し過ぎだって。――レンの方こそ、体はいいの?」


 布団に横たわるなり、自分のことよりも蓮華のことを気にかけた。


「異常は無い。お前は自分事だけ考えろ」

「ははっ。本当、相変わらずなのね」


 目の前にいる彼女は、当時と変わりない。それが嬉しくて、シエロはやわらかな笑みを浮かべていた。


「しばらくはここにいろ。外には出るなよ?」

「はぁーい。ちゃんと聞きます」

「いい返事だ。――まだ、内に残っているようだな」


 腕に触れ、シエロの容体を確認する。

 先程付けた数珠は黒く変化し、亀裂が生じている。新しい物と取り換えると、早くもその数珠も、黒く変化し始めていた。


「これぐらいでは間に合わぬか……」

「でも、髪色が戻ったんだから、気分はいいわ。こうして、話すこともできるんだもの」

「後から、木葉に介抱させよう。やつは術に長けているからな。もう少し、辛抱してくれ」

「辛抱だなんて。今までの時を思えば、そんなの一瞬よ。それよりも――」


 あの子は大丈夫なの? と、不安そうに問いかけた。
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