久遠の花〜 the story of blood~


「私がいた時代では、〝鬼〟とは恐怖、摩訶不思議で謎なものの総称。周りと違うというだけで、鬼と呼ばれる人も数多く見てきました。――そんな私を、蓮華様は護ってくれました。なので、面倒がられても、口は出しとお世話はさせていただきますけどね」

「ふふっ。レンと対等にやり合うなんて、すごいことですよ。――やっぱり、そばにいたんだ」


 首を傾げる木葉。

 すると、シエロは上体を起こし、そっと、木葉の手に触れる。





「約束を――果たすわね」





 桜色の瞳が、紫へと変化していく。

 やわらかな笑みと共に、手から温もりが伝わり――途端、木葉は言葉の意味を理解した。


 ◇◆◇◆◇


 目を開けると、そこに水はなかった。





 ――――あぁ、そっか。





 自分は、家に来たんだった。

 起き上がり、頭を働かせる。

 えっと……。確か、学校に行かないといけないんじゃ。

 制服に着替え下りると、おじいさんは驚きの表情で出迎えた。


「もう起きていいのかい? 休んでもいいんじゃぞ?」

「調子はいいですから。あまり休んでいては、後が大変になるので」

「行きたいというなら止めはせんが……」

「大丈夫です。無理はしませんから」


 それでは、と軽く会釈をし、自分は学校に向かった。

 道順は知らなかったが、学生証にあった住所と、同じ制服の生徒について行き、学校に着くことができた。

 確か、クラスでよく話すのは――。





「みーさきっ!」





 どんっ、と勢いよく背中に誰かがぶつかった。振り向けば、とても嬉しそうな顔をした女生徒の姿が。
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