久遠の花〜 the story of blood~
「毎回……こういうの、は、疲れますけど。――最初のであれば、大丈夫です」
つまりは、また口付をするのは構わないと――そう言っているのかと、胸が高鳴る。
「そんなこと言ったら、またするかもしれないぞ?」
「事前に言ってもらえれば、大丈夫です」
さらっと肯定され、思わず間の抜けた声が出てしまった。
「そして最初に言ったとおり、これは叶夜にしかしません。だから、安心して下さい」
恋愛感情なんて無い。
ましてやオレを特別だと思ってない。
そうだとわかっていても……今の言葉は、とても嬉しい。
「――あ。やみましたね」
その声に、空を見上げた。
さっきまで降っていた雨はやみ、空には星が見えている。
「――そろそろ行くか」
美咲を抱え、再び歩きだす。
帰り道はわかっていたが、もう少しゆっくり、この余韻に浸っていたかった。