久遠の花〜 the story of blood~
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「さすがに――箱を持ち出すことは出来ぬか」
「当たり前です! ノヴァでも重症なのに、ましてや貴方は王華の長。それも、魂の半分は別にあるんです。これ以上の無理は、体の維持どころか、魂の消滅を意味するわ!!」
「そう騒ぐな。今の私が消えようとも、片割れは生きている。私が成しえなかった望みは、それの存在がある故に成就している。例え消滅しようとも、今までのことに悔いは無い」
「……相変わらず、のろけてますね」
「お前には悪いと思っている。だが――私が心を捧げるのは、あの者と決めているからな。お前とてそうであろう?」
「まぁ……違いはしませんけど」
「だから、その為の契約破棄だ。しかし気を付けろ。私がこの体を奪えるのは、持って後五日。それまでに姫を覚醒させ、お前はお前で、やるべきことをしておけ」
「わかってはいますけど、後五日だなんて」
間に合うかはギリギリだと、エメはため息をもらす。
「間に合わなければ仕方あるまい。再び箱を封じる為に、身を捧げる必要があるだけだ」
懐から短剣を取り出すと、それをエメに手渡す。
「これを、姫に渡しておけ。――使い方は、自ずと分かる」
そろそろ行け、とエメにここから去るように言う。だが、エメは動こうとしない。しばらくしても動かないエメに、ディオスは再び言う。
「ここにいては、お前の呪いは早まるばかりだろう? 生きる可能性を、自ら潰すのではない」
くしゃっと、エメの頭を撫でる。
それはエメにとって、忘れることの出来ない、とても大事な思い出だった。