久遠の花〜 the story of blood~
ふと、妙な音が聞こえた。なんの音かと意識を集中してみると、
「……、っぐ!」
今度ははっきり、苦悶の音声が耳に入った。
聞こえたのは、どうやらベンチで横になっている人から。心配になりそばに近寄れば――苦しそうに身を丸める、少年がいた。
「ど、どこか……悪いんですか?」
苦しんでいると思ったら、声をかけずにはいられなかった。
「――――…?」
呼びかけに、ゆっくり視線を向ける少年。
その瞳はあまりに弱々しくて、力の無い瞳のまま、黙って私を見続けた。
綺麗な……瞳。
思わず、ため息がもれるほど。
澄んだ青い色をした瞳は、あまりにも綺麗だった。
髪も、瞳と同じぐらい綺麗で。少しウェーブがかった艶やかな黒髪は、少年が呼吸をするたびに、小さく揺れていた。
「悪いなら……救急車、呼びますよ?」
ようやく言葉を発したのは、しばらく経ってからで。
その瞳に魅了されたのか、目をそらせないまま、私は少年を見つめていた。