久遠の花〜 the story of blood~


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 箱の中で見たことを、叶夜は皆に説明していた。

 本来、箱に入ってしまえば、赤の命華を再現させる為に記憶が消され、自分のものでない原点を植えつけられる。体験した蓮華が以前話していたが、叶夜は全く違う体験をしていた。


「前はあやふやでしたが……オレ、最初の赤の命華と関係があります。
 そもそも、彼女はただの人間だったんです」

「人間って……でも、私や美咲には力が」

「周りはそうだったみたいですが、彼女は力の無い人間でした。――とは言っても、彼女には周りに無い特化した力がありました」

「【親殺し】だなんて、大した力よねぇ~」


 一斉に声の方向を見る。殺気立つ面々に、声の主は明るく話しかけ姿を見せた。


「怪しい者じゃありませんって。私は、貴方たちと会った黒髪ロングの青年の、現主です。あの子が今来れないんで、代りに来ちゃいました」


 大きめのフードで顔を隠したその者は、声から察するに少女のようだ。


「どうして……【親殺し】の名を知ってる?」

「宝具関係には詳しいのよ。それに、これは人間にしか在りえない事柄だから、興味があってね」


 それから少女は、叶夜の代わりに話し始めた。


「世の中には、英雄や神。魔の者が使った物を宝具と呼んでいます。中でも、彼女が持ってる宝具はレア中のレア。なんせ、彼女の存在自体が宝具ですからねぇ~」

「だが、それは人間にしかないのであろう? 美咲は命華だ。それに、あまりに大きな力は、存在自体が危うくなると思うのだが……」


 疑問を口にする蓮華に、少女は問題ないと言い切る。


「正確には、彼女の子宮が宝具なんです。生まれ持った体の一部だから、宝具を持った者に負担は無い。【親殺し】の異名は、その子宮から生まれた子供は確実に、親以上の能力を有するからなんです。ちなみに、【父殺し】なんて異名もあるんですが、昔、実際にそーいった事が起きたんですよねぇ~。
 さっきも言ったように、これは本来、人間にしか起きえない奇跡です。でも、彼女の原点に気付いた者がいた。それを復元すれば、更に強い者が生まれると考えたみたいで、そいつが今のような事態を引き起こしたらしいですね」
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