久遠の花〜 the story of blood~


「シエロは何処に!?」


 詰め寄る桐谷さんに、いつもの冷静さは無い。敵でもないのに瞳を変え、目が合った途端、話すことが出来なくなってしまった。


「答えなさいキョーヤ!」

「まーま、落ち着いて。その瞳のまんまじゃ、彼ら身動きとれませんよ?」


 視線を動かせば、そばにいた使い魔も、オレと同じく固まっていた。


「探せますからご安心を。私の使い魔なら、それが出来ます」

「っ!? 本当、ですか?」


 告げれば、桐谷さんの瞳が元に戻り始めた。まだ完全に落ち着いたわけじゃないが、とりあえず、話は聞いてくれそうだ。


「本当ですって。もちろん、日向さんの居場所も」


 ようやく色が治まると、桐谷さんはいつもの雰囲気に戻った。


「あのう……もしかして、エメさんも?」

「えぇ、そうです。……全く、私も信用がありませんね。これでは、前と何一つ変わらない」


 悔しそうに顔を歪める桐谷さんに、少年は相変わらずの様子で接する。


「終わるの早過ぎますって。――ほら、行きますよ」


 多くの蝶が舞う。繋げる場所はもちろん――オレたちの世界だ。


 *****





「――なんだ、考えることは同じか」





 命華の石碑に向かうと、蓮華はそこで、見慣れた姿を見つけた。


「リヒトに黙って抜け出したのか?」

「そういうレンだって。木葉さん、心配するわよ?」

「私のことなどよい。お前がいなければ、リヒトはまた泣くぞ」

「また? いつ泣いてたの?」

「お前が箱に消えた後だ。おまけに死のうなどと……あのまま情けなく泣いておれば、私が殺していた」

「相変わらず物騒ね。――本当、レンには感謝してもしきれない。彼のことだけでなく、美咲のことまで」

「お前たちは、私を私として扱った。だから私もそうする。――まぁ、少しシエロの方に肩入れはしているがな」

「ふふっ、レンが友だちでよかったわ」

「友達、か。そう呼べるのは、お前とリヒトだけだ」
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