久遠の花〜 the story of blood~
「ちょっと、レフィナドを忘れてるわよ?」
「……あれの名前を出すな」
「そうやって嫌悪するってことは、まだ興味があるってことなのよ?」
「元々興味などない」
「もう、強情なのも相変わらずね。原因がなんなのか――もう、気付いてるんでしょ?」
しばらく空を眺めると、シエロは背を向ける。
「そろそろ行くわ。少しは母親らしことしなくちゃ」
「なら――私も真似事をするか」
◇◆◇◆◇
漆黒が空を覆う。
もう、ここ以外に光なんてない。そう思えるほど深い闇が、この世界を蝕んでいた。
「――いい景色だな」
ニヤリ、口元を緩める彼。
顎を上に向けられると、口になにかを押し込まれた。思わず飲み込めば、彼は嬉しそうに、何度も頬に口付けをしてくる。
早く……止めない、とっ。
動かない体に力を入れ、早くあの子が気付いてくれるよう力を使った。――だが突然首を鷲掴まれ、途端、私は力を使うことができなくなってしまった。
「心配せずとも、やつらはもうじき来る。――力ヲ使ウナ」
彼らしからぬ声。いくら姿が違うからといっても、この声はまるで……。
「もっと近く……全てを、共に」
子守唄のように、ゆったりとした音声が全身に浸透する――。
自分を私だと、前よりも強い自己を認識できたのに――どうやら、今のままでは目的を果たせそうにない。
私は――ここで終わりだ。