久遠の花〜 the story of blood~


「ほら、綺麗に埋め直す」


 言われて、オレたちは最初に見た時よりも丁寧に土を戻した。


「よし、次に行こうか」


 草原の真ん中。そこに、不自然なドアが一つ。

 この先には、どんな光景があるのか――。

 順番どおりにいくなら、次は少年の。


「自分で開ける」


 ノブに伸ばした手を遮り、少年が言う。

 そしてにこやかな笑顔のまま、ゆっくりドアを開いた。





「――これが、お前の?」





 目の前にあるのは、何処かの森林。

 日差しが真上から照りつけ、心地いい風が肌に触れる。


「嫌な記憶にしては、穏やかじゃないか?」


 そう思えるほど、この空間は平和だった。


「そー言われてもねぇ~。昔のことあんまり覚えてないんだ。再生してくれるならラッキーって思ったのに――ハズレたかな? 二人は見覚え無い?」


 使い魔を見れば、首を横に振っていた。

 オレにもこんな風景に覚えは無い。過去に穏やかな気分でいられた覚えは無いし、そういった感覚がまず分からなかった。


「二人じゃないとすると、やっぱり私の記憶なのか――それとも」


 ん~としばらく唸ると、少年は使い魔の方を向き立ち止まる。


「最初の日向さんって、どーして呪いを受けたわけ? どーも気になっちゃってさ。そもそもの始まりはなんなのか、って」

「そんなことより、先を急いだ方がいいと思うが」

「疑問の芽は摘んでおきたいタイプなんでね。聞きたくないなら、次のドアでも探してて」

「……なら、そうさせてもらう」


 少しでも早く……。

 だが、逸る気持ちに任せて行動するような真似はもうしない。使い魔にも約束を交わし、周りに警戒しつつ、次へと進むドアを探し歩いた。
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