久遠の花〜 the story of blood~
「これで――影は大丈夫」
周りを見れば、あれだけ湧いていたはずの影は、確かにいなかった。
「影はエメが。土地の浄化は、王華の長が担いました」
「! だから……二人、だったのね」
「えぇ。長の名の意味は〝洗練された者〟。エメの名の意味は〝愛を願う者〟。だから、二人が適任だったってことです」
「でもっ、そうなったら二人の魂は……」
「すみませんが、話はあとに。まずは蓮華さんたちと合流しましょう」
外を目指し、三人は大樹の中を進む。気を引き締めていた面々だったが、外の光景を目にすると、驚きのあまり声を失った。
空は暗いが、黒煙はもう無く。
月は青く輝いて、先程まで漂っていた異臭も無い。
あまりに平和で――穏やかな世界が広がっていた。
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正直、オレと■■■は困っていた。二人であいつを連れていくはずだったが、ここまで美咲が来るとは――。
「体は間に合うが、魂を完全に戻すのは難しい」
やはり、多少の欠落があるのか。
特に記憶の方は、混乱を避けられないらしい。
「お前は――どうする?」
オレは既に体が消えている。だから今更戻ることは出来ない。――出来たとしても、どれほど時間がかかるやら。
「だが、諦めてはいないのだろう?」
当然だ。もし生まれ変わっていても、必ず見つけて見せる。
「そうか。我は――この世界に留まっていることにしよう」
■■■は、もうこちらの世界に干渉はしないらしい。事が事なだけに、均衡が戻るまでは完全に接触を断つことになるようだ。