久遠の花〜 the story of blood~
怒りを抑えながら、青年は問う。それに叶夜は少し焦りながらも、事情を説明した。話を聞き終えると、青年は重いため息をもらしながら片手で頭を押さえた。
「あそこに、行ったのですね?」
「はい。どうやって行ったのかは分かりませんが……」
「何者かが手を貸したのでしょう。暴れたのは多分、あちらに行ったことが引き金でしょうね。なので、特に貴方のせいという訳ではないかと」
「そうだといいですが……」
「少しは落ち着きなさい。それが上に立つ者になるなら、尚更です」
美咲をソファーに寝かせると、青年は毛布をかける。
そしてしばらくの沈黙後――青年は再び、話を始めた。
「今後も何かあるようでしたら、こうやって連れて来てもらえると助かります」
「もちろんです。オレでは、手当てなんて出来ませんから」
唇を噛み締める叶夜。それを見て、青年は軽いため息をつく。
「反省もいいですが、必要以上に落ち込むのはいけません。それに――彼女はきっと、貴方をせめたりしないでしょう」
やわらかな言葉。その言葉に、叶夜は戸惑いの表情を見せた。
怒られると覚悟していたものの、気遣ってくれるとは予想もしてなかったようだ。
「念の為薬を持って来ます。その後また、彼女を送って下さいね」
青年は薬を調合する為、一旦部屋から出て行った。
残された叶夜は、美咲のそばに行くなり膝をつく。そして起こさぬよう、そっと頬に触れ、
「――許してくれ」
今にも消えそうな、悲しみを帯びた声。
それに美咲は微かに反応を見せたものの、起きることはなかった。