せ ん せ い
真面目な、シリアスな雰囲気を、一瞬で打破された気がした。
考えた、って何を考えてその言葉が出てくんの!せめてもう少し柔らかい言葉があったでしょ。もう泣きそうだ。
「ひ、ひど……」
「とりあえず、最後まで聞いてください」
低い声で、しかも早口で言われ、とりあえずわたしは涙をのむ。
「香水の匂いとかあのキャピキャピした感じとか、いきなり高くなる声とか無駄に生えてる睫毛とか、ホント無理なんですよね」
たった一息で出てきた女子への不満は、わたしにも若干心当たりがあった。現に今、わたしの目には付けまつげ。
まさか努力が裏目に出ていたとは。心の中のわたしは大きく肩をおとして号泣した。
「でも」
そろそろメンタルが折れそうで、じんわりと涙が滲んできた目元。
それを溢すわけにはいかないと、目頭を押さえた時だった。
「家族の為に朝も夜も一生懸命働くような女子高生は、好きですよ」
先生が、綺麗に笑ったのは。
「…え…それ……」
「私のことを好きなら、尚更好きです」
「…ちょっと待って」
「なんでしょう」
混乱して頭が上手く回らず、瞳が定まらないわたしとは裏腹に、色々と暴露を始めた彼はひょうひょうとしている。
朝も夜もバイト。
女子高生。
自分のことを好きな人。
当てはまる人が一人いる。
わたしだ。
自惚れるなと言われるかもしれない。
だけど、そうじゃないかと思えて仕方がない。
先生の笑顔を見ていると。
「…それ…誰のこと……?」
裏返る直前の、不安定の極みの声で尋ねると。
「……誰って…」
彼は色白の細い指で、理由の分からぬわたしの涙を拭った。
「志衣奈さんです」