密会は婚約指輪を外したあとで

「まだ会ったばかりだけど。俺、なゆちゃんのこと気に入ったから。俺のところに永久就職っていう手もあるよね」

「あ……、はい」


私は半信半疑になりながらも、彼の真っ直ぐな瞳に吸い寄せられ、深く考えずに頷いていた。


もしも、取り柄のない私を好きになってくれたとしたら。

一馬さんみたいな優しそうな人となら、本気で結婚を考えてもいいかもしれない。

こんなチャンスは滅多にないはずだから。





一馬さんと連絡先を交換したあと、私たちはロビーで別れた。

ホテルを出れば、外はすでに闇が落ちている。

上着を持ってきていなかったので、ひんやりと肌寒い。


タクシーで帰るか地下鉄で帰るか迷っていると──

円柱にもたれるようにして立っている、すらりとした体形の男の人が目に入った。



その人は、さっき出会った一目惚れの彼のように見えて……

ドクン、と心臓が軽く飛び跳ねる。


まさか、運命の再会!?

< 15 / 253 >

この作品をシェア

pagetop