密会は婚約指輪を外したあとで
ベッドの上で二人きりで夜を明かしたのに、何もされていないって……女としての魅力なし?

渚さんとの二股というより、どちらかといえばペットか妹として扱われている、という説が有力かもしれない。


「奈雪って、眠ってるときは甘えたがりなの?」

「え?」


私、何かした?


「腕枕嫌がらなかったし、フツーにすり寄ってきた」

「……嘘でしょ」


想像したくない。
睡眠中のこととはいえ、彼氏でもない人にべったり甘えるなんて……!

慌てて腕枕の状態から脱出し、私は上半身を起こした。


「可愛かったけどな、子どもみたいで」


からかう声を無視しドレッサーの前に立つと、鏡の中の鎖骨の近くに赤い小さなアザを発見した。


「これって、まさか……」

「ああ、キスマークのこと? 兄貴に見つかったら面白いかと思ってさ」


悪戯が成功したワルガキのような表情で、拓馬は私を鏡越しに見ていた。

昨日の夜、鎖骨の辺りにキスをされたことをぼんやりと思い出す。
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