密会は婚約指輪を外したあとで
◇
一馬さんが娘の誕生会へ戻った頃、私はよくわからないまま、チャペルの重い扉を開いていた。
式場のスタッフに一馬さんの友人がいて、特別にチャペルを解放してくれたらしい。
「綺麗……」
無意識の溜め息が出るほど、美しい空間だった。
客席に挟まれた白いバージンロードの向こうには、百合などの豪華な花と大きな十字架がライトアップされている。
とりあえずバージンロードを踏まないように左側の通路を歩き、一番前の新婦側の席へ腰かけ、祭壇を眺める。
ここで結婚できた人は、みんな幸せで溢れていたことだろう。
私もいつか、ここで式を挙げられたら良いのに。
拓馬に会いたい……、
想いが溢れた瞬間、背後から扉の開く音がした。
振り返ると、長身のスーツ姿の男の人が重い扉を開けてこちらへ入ってくる所で──。
「拓、馬……?」
確かめるための声が掠れる。
私は信じられない気持ちのまま、席から立ち上がった。