密会は婚約指輪を外したあとで




一馬さんが娘の誕生会へ戻った頃、私はよくわからないまま、チャペルの重い扉を開いていた。

式場のスタッフに一馬さんの友人がいて、特別にチャペルを解放してくれたらしい。


「綺麗……」


無意識の溜め息が出るほど、美しい空間だった。

客席に挟まれた白いバージンロードの向こうには、百合などの豪華な花と大きな十字架がライトアップされている。

とりあえずバージンロードを踏まないように左側の通路を歩き、一番前の新婦側の席へ腰かけ、祭壇を眺める。

ここで結婚できた人は、みんな幸せで溢れていたことだろう。

私もいつか、ここで式を挙げられたら良いのに。


拓馬に会いたい……、

想いが溢れた瞬間、背後から扉の開く音がした。


振り返ると、長身のスーツ姿の男の人が重い扉を開けてこちらへ入ってくる所で──。


「拓、馬……?」


確かめるための声が掠れる。

私は信じられない気持ちのまま、席から立ち上がった。
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