密会は婚約指輪を外したあとで
「兄貴の嫁候補にしては地味な女だな。それで化粧、してるつもり?」
麗しいくちびるから流れ出たのは、殺傷能力のある毒だった。
私は一瞬前までの淡い恋心がサーっと冷めていくのを感じた。
この人、喋らない方がいいのに!!
「ごめんね、なゆちゃん。こいつ、悪気があるわけじゃないんだ」
お茶を運んできた一馬さんが慌ててフォローする。
「誰にでもこうだから、なゆちゃんが歓迎されてないとかじゃないからね。こいつの言うことは気にしないで」
「…………」
私は黙り込み、下を向く。
そうは言われても、一度刺さった毒まみれのトゲはなかなか抜けない。
「なゆさんは僕のお義姉さんになるんだよね。今から楽しみにしてるんだ」
ハルくんが無邪気な笑顔で話をそらしてくれて、私の凍りかけた心はかろうじて解凍されていった。