密会は婚約指輪を外したあとで

『本当にごめん……。この前、深瀬に紹介したの、別人だったわ』

「──えっ。……別人、って?」


聞き間違いかと思った私は、スマホを耳に当て直しながら尋ね返した。

頭が真っ白になって、叶多さんの言葉がよく耳に入ってこない。


『いや、それが……本当は3兄弟の真ん中の拓馬を紹介したつもりが、当日になって長男の方と入れ替わってたらしい』


入れ替わった……?


「そんな……ホントは拓馬さんが来る予定だったんですか?」

『そのつもりだった。拓馬は高校のときの同級生だから。俺、兄貴の方とは面識ないし』

「そうだったんですか……。あ、でも、一馬さんはとっても素敵な人だったので、逆によかったですよ」


叶多さんに悪いので、一応そう言っておく。


『深瀬、気に入ったのか? それなら、とりあえず拓馬抜きで、話進めてもいいかな』


私のフォローに安心したのか、叶多さんは『また連絡するわ』と言って電話を切った。
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