幼なじみじゃイヤなんだ。
そんな子どもの頃の事を思い出しながら1曲を終えた。


次の曲へと移ろうとした時、何となく目線を感じて、そちらを向くと。





「わっ!上坂くん」


「…あっ、ごめん」


「いつからいたの?ごめんね。気付かなくて」


「……いや、あまりにも…」


「えっ?」





上坂くんは教室の入り口に突っ立ったまま、ただこちらをじっと見てる。


言葉を止めたままの上坂くんに凝視され、どうしたらいいのか分からず、落ち着かなくなる。


思わず私から口を開く。





「…えぇっと?」


「…ごめん。あまりにも綺麗だったから」


「へ?」





上坂くんが俯いて、その表情が見えなくなる。






「『きれい』?」


「…うん」


「あぁ、フルートの音?」


「えっ?」





上坂くんが顔を上げる。

頬が少し赤くなっていた。





「ありがとう。ちょうど思い出してたの。流瑠も昔、初めて私のフルート聞いた時、上坂くんと同じ様な事言ってくれたなぁって」


「……」


「褒められると、元気が出るね。さぁ。作業しちゃおう」


「…あ、う、うん」





私はフルートをケースの中に片付けて、今日、してしまわないといけない作業に取り掛かった。





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