記憶混濁*甘い痛み*2

離れたくない。


離れているのが…コワイ。
その程度だ。


「友梨……僕はずっと友梨の側にいる。子供の頃から、僕は友梨のものだったろう?違うかい?深山咲-みやまさき-のお姫様」


「お兄様……」


落ち着きのある低めの声で囁かれると、友梨は幸せそうに微笑んだ。


「うん…お兄様は、ずっとずっと、友梨の味方だった。友梨は…お兄様がすき」


自分の手の平と、芳情院の手の平を合わせ、ロザリオを包み込む。


「お兄様?お兄様も…」


「ああ、もちろん」


「…もちろんじゃ解りませんわ。いじわるね」


「はは。もちろん、愛しているよ。僕が愛するのは、生涯、君1人だけだ。友梨…」


「うん…嬉しい。友梨は…幸せ」


「僕は、友梨を不安にさせているかい?」


「いいえ…お兄様が不安にさせている訳ではないの。友梨が……子供過ぎるんです。お兄様と離れていたくないの。お兄様に触れて、初めて安心出来る」


「……そろそろ、日本に帰る準備を始めようか。友梨は、どう思う?まだ不安かい?」


「…日本に、ですか?いいえ!いいえ…帰れるなら…出来るだけ早く帰りたいわ。明日にでも!」


そう言って、瞳を輝かせる友梨。
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