記憶混濁*甘い痛み*2
もう『何も』欲しくないと、思っていたのに。
友梨は両手を顔から離し、のそり、と、ベッドから背中を上げた。
「……わたしのせいだ……」
コツン…
左手薬指の、二つの指輪を、友梨はベッド脇のシンプルなサイドテーブルの縁にあてる。
コツン…コツン…コツン
……わたしが、あかちゃんより、かずねせんぱいを、えらんだから。
コツン、コツンコツン、コツン、コツンコツンコツン、コツン…
……だから
コツンコツンコツン、コツン、コツンコツンコツンコツンコツン、コツン コツン
……だから、あかちゃん、いなく、なったんだ。
コツンコツンコツンコツンコツンコツンコツン、コ、コ、コココ、コツンコツンコツン…
……なにも、いらない、なんて
コツンコツンコツン…
……そんなつもりじゃなかったのに。
コココ、コツンコツンコツンコツンコツン
……わたしは、ただ……
コツン…
……かずねせんぱいと、あかちゃんと、さんにんで
コツンコツンコツンコツンコツン
……しあわせに、なりたかった
コツン
……だけ、な、の、に!!!!!
コツンコツンコツン、ガツ、ゴツ、ガンガンガン、ガツ…